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HUNTER's LOG on PORTABLE

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プロローグ

a side story ビッケ篇

雪山のビッケ

暦の上では春を迎える季節。標高の低い地域は寒い冬を抜け、暖かな日差しに人々の顔のほころぶ季節だが、ここ北の大地ではなかなかに予断を許さない時期である。

フラヒヤ山脈の懐に抱かれたここポッケ村とその周辺の狩り場は無論年中雪が姿を消すということはないのだが、春先などはなおさらだ。気温の上昇によって「緩く」なった雪層は厳冬時のような表層雪崩ではなく、雪層全体が滑る全層雪崩を起こす。
加えて冬の間に分厚く降り積もった雪は下の地形をわからなくさせる。気をつけねば「地面のない」雪庇(せっぴ)の上を歩いている、ということにもなりかねない。

森林限界をこえたところから登る高い崖の上に立って、ビッケはそんなことを思っていた。この崖の際も手にした片手剣をその端に突き立てると、そこからひび割れごそっと崩落したりする。モンスターとの立ち回りで足場を間違えたら、自分がそれとともに落ちる、ということだ。

フラヒヤ山にはポッケ村の者だけでなく、遠方からのハンターも頻繁に足を踏み入れる。そうした中には雪山に慣れていない者もいるのだ。そんなハンター達に、山の状態を知らせ、無用な事故を防ぐのも彼女の仕事のうちだった。

(それにしても…)

目の前で分厚い層を成している雪にスコップを入れつつ、彼女は思う。

(…この山もずいぶんとおとなしくなった)

去年のこの季節といったら、春になって気のはやったモンスター達があちらこちらで大暴れをしていたものだが。

「ほっほっほ。おまえの両親が狩り場に立っておったころや、継いでこの山を守っておったグランが健在だったころも山は静かであったよ」

とは村長の言だ。

「おおけな(大きな)モンスターというのはその地域の『ボス』をみとめ、その『ボス』の居るところには踏み入らんし、踏み入ってもやたらと暴れたりはしないものよ。つまりは…ビッケや、おまえが今のこの山の主、ということじゃろうの?」
「あたしが、ぬし、ですか」
「そうじゃ。ずいぶんかわいらしい主殿じゃな」

ほっほっほ…と村長は笑っていた。そんなものかしら、とその時のビッケはいぶかしがったものだが、確かにそう言われると心当たりはある。

最近はブランゴどもと出くわしてもいきなり戦闘になったりはしない。以前はいきり立って襲いかかってきたあの小ザル達も、今はビッケの姿を見とめるとドドブランゴにひっぱたかれたときのような顔をしてウロウロし、しばらく遠巻きに威嚇したりはするのだが、やがて退散してしまう。

ここしばらく狩りを手伝ってもらっているアイルーのファーに聞いてみても、

「そうだニャ!旦那さんは立派な雪山のぬしなのニャッ!」

そういうことであるらしい。

今も少し離れたところにブランゴが2頭。雪層を切り出しているビッケを落ち着かない様子で遠巻きにしている。雪にスコップを入れているときは跳んだりはねたり…どうも威嚇をしているらしいのだけれど、視線をそちらにやるとしゅんとなって向こうを向いてしまう。

(ここは弱層はないみたい)

そんなブランゴの様子に微笑みつつ、彼女は切り出した雪層を確認する。数日前に少し吹雪いたのだが、それによる弱層は認められなかった。この弱層(雪層間の締まりの弱い層)が発生すると、そこを境に表層雪崩が起こる。これが広域に見られると山全体が雪崩の巣となり、狩りどころの話ではない。入山そのものを厳しく制限することになる。

大規模な全層雪崩も近々には心配なさそうだ。この兆候があるときはブランゴ達はどこかへ隠れて出てきはしない。明日、ドンドルマからのハンターが二人山に入ると言っていたが、この辺りは問題はなさそうだった。

彼女は骨製の折りたたみスコップをしまい、これまた骨製の片手剣を腰から外すと、近くにごろんと転がっている岩に腰を下ろし、一息ついた。

この地方では、よほどの理由がない限りは骨製の武器・アイテムが好んで使用される。もとより厳寒期は大げさに着込まなければ狩り場に出られないので軽さが求められる、ということもあるが、そのような極端な寒さの中にあっては金属は金属である、というだけで危険となるのだ。

極低温にさらされた金属は、素肌が触れれば即座にその肌を凍らせ、皮膚を貼り付かせてしまう。防具の金属が冷えていけば、そこに接する身体部分に凍傷を引き起こす。

そんなわけで、雪山地方では骨素材の工夫が発達していた。南の温暖な地域のヘビィボウガンの名銃・アルバレストをベースに、可能な限り金属部品を骨素材で代替して作られた雪山生まれのヘビィボウガン・ボーンシューターがその代表だろうか。

(山頂の方も見て帰ろう)

ひとごこちついたあと、彼女は立ち上がった。

静かになった山、といっても周辺地域での縄張り争いに敗れた大型モンスターが紛れ込んでくることはしょっちゅうある。見回りは常に必要だった。

それに…春になったら各地からの狩りの依頼も一気に増える。冬の間に蓄えの乏しくなった調合素材もいくらか集めておいた方が良い。山頂から山腹内の洞窟を抜けていこう、と彼女は思った。

西の空を見上げ、天候を確認する。
雲ひとつない、濃い青が広がる上天気だった。

Gクラスの解禁

「あらっ。ビッケちゃ〜ん!おかえりなさ〜い」

山を下りたビッケを迎えたのは何とものんびりした女性の声。そちらを見なくてもわかる、ギルドマネージャーの声だった。
各地方からの狩りの依頼を統括するギルドのポッケ村支所を管理している責任者なのだが、どうにもほんわかしている竜人族の女性である。

表に出ていることがまず珍しいが、その彼女がビッケに「おいでおいで」をしている。よく見ると傍らには村長さんも立っていた。いつもは村の祀るマカライトの巨大な結晶の傍らに置物の様に居座っている村長だが、どうやら二人してビッケに用事があるらしい。

「あ、手紙…」

ギルドマネージャーの手に紙片が握られているのを認め、ビッケの鼓動が少しはやくなる。

「お母様からのお手紙よ〜」

やはり。
ビッケははやる心を抑えつつ、集会所へ向かった。

西シュレイドを統括する首都ヴェルド。その中心たる王宮に併設されてある王立学術院生物学研究所の一室にあって、カエラ・アーサーは、少し逡巡していた。

(ヴィクトリアももう二十歳…)

ポッケ村のビッケ(ヴィクトリア)。その活躍は遠く離れたここヴェルドにまで時々聞こえてくる。先だってセクメーア砂漠に出現した2頭のディアブロスに自分の娘ヴィクトリアが単身挑む、という噂を耳にした時には(ずいぶん成長したものだわ…)と素直に感心したものだ(父親の方は情けないほどにうろたえていたが…)。このクエストはハンターの間では「4本の角」と特別視され、その発端に第一王女の勅があった故事にならって今なおその成功譚はクラスの上下を問わず各地の話題となるクエストでもある。

しかし、その上へ挑むとなると話は別だ。

Gクラス。

その呼称はハンターに大きな畏怖と憧憬の念を同時に抱かせる。誰もが挑めるクラスではない。この世の最高の腕前を持つハンターですら、そこでは必死の狩りとならざるを得ない強個体モンスターを対象としたクラス。

カエラの手元にあるのは、そのGクラスの狩猟に挑むことへの許しを求める娘からの手紙だった。村長と村のギルドマネージャーの一筆も添えられている。

(私がGクラスの依頼を受ける様になったのもそのくらいだった)

と、思う。ミナガルデの養成学校からココット村のジゴロウのもとに送られ、師匠ジゴロウの許しを受けて独り立ちしたのがカエラ二十歳のときだった。が、その「早すぎる成長」は彼女の特異な生い立ちによるところも大きい。ヴィクトリアはある意味「普通の娘」だ。ポッケ村で生まれ、普通に育った。

(私とは違う…けど…)

止めて止まるものでもあるまい、とも思う。何せ自分の娘であるので、そのあたりは仕方がない。

(ジョンにはしばらく黙っておこう)

ということになった。カエラの夫であり、ヴィクトリアの父親であるジョンは「神の」と賞される弓の腕前を持つ優秀なハンターだが、学究肌で心配性である。ことに娘のこととなると普段の冷静沈着ぶりはどこへやら、途端に見る影もなくオロオロしてしまうのだった。

(私の武器庫も譲るときかしらね…)

カエラは東の方へ開かれた窓辺の机につき、その彼方にあるフラヒヤ山脈の方へ目をやった。そして今一度考えをめぐらせた後、便せんを取り出したのだった。

「…ということなのよ〜。ビッケちゃん良かったわね〜」

母カエラからの手紙を読み上げ、ギルドマネージャーはそんなのんびりした感想を述べた。追って村長が続ける。

「母殿からは武器庫の使用許可も出ておったよ。鍵はこれじゃ」

そう言って懐からひとつの鍵をさし出す村長。

「手入れは行き届いておる。さっそく一通り見て回ると良い。今では作製方法が変わって作り難くなってしまった武器もあろう。逆にさらなる強化ルートの確立しておる武器もある。なにせギルドにあって『黒の継承者』と呼ばれた母殿の武器じゃ。お前のこれからの狩りの力となろうよ」

(くろのけいしょうしゃ?)

聞かない名だ。ギルドの高位の狩猟を手がけていた、という話は聞いていたが…母はそんな風に呼ばれていたのだろうか。が、それはともかく…

「あ、あの…」
「ん、何かの」
「あの、それで狩りの依頼の方は…」
「……」
「……」

呆れた顔を見合わせる村長とギルドマネージャー。

(あれ?何かまずかったかしら)

ビッケが少し不安になって二人を見比べる。そして、やがて二人は笑い出したのだった。

「ほっほっほ。いやいや、Gクラスと聞けば少しは怖じ気づくなり尻込みするなりするもんじゃが…もう仕事の打診か。ビッケよ、おぬし…ほっほっほ」
「さすがは黒の継承者の娘、なのかしらね〜。血は争えないわねぇ〜」

どうやら自分はずいぶん血気にはやったことを言っているらしい、と気がつきビッケは顔が赤くなった。しかしまただ。くろのけいしょうしゃ。

「まあよい。狩りの依頼の方は明日改めてギルドマネージャーの方から説明を受けなさい。今日は山を見回ってきたのだし疲れてもおろう。まずはゆっくり休むことじゃ」
「はい。村長」

少々バツの悪い顔でビッケは承諾し、山の様子を手短に報告すると、村長とともに集会所をあとにした。外に出てみればもう日は山間に隠れている。空には明星が瞬いていた。

転章

広場を抜け、村長の「定位置」であるマカライトの巨大な結晶の前まで来たとき、ビッケは少し意を決してたずねてみた。

「あの、村長」
「ん。何かの」
「先ほどの『黒の継承者』のことなんですが…母はそんな名で呼ばれていたのでしょうか」

今度は呆れた、というより本当に驚いた顔をする村長だった。

「ビッケよ、おまえ何も聞いておらんのか」
「はい。両親からはその名前を聞いたことはありません」
「なんと…そうか。ふーむ。いや、あれももはやその名が必要となることはないと思ったのかもしれんが…しかし…そうじゃの、ビッケよ、おまえがこの先Gクラスのハンターとして各地へ赴くにあたっては知らんというわけにもいかんであろうの」
「はあ…」

しかし、村長はしばし沈黙した。いつもの様にたき火を杖でつつきながら、何かを考えている。どうして良いかわからないビッケはただ待つのみだった。やがて村長はふっ、とため息をひとつつき、静かに続きを語り出した。

「……良いかビッケ、ヴィクトリアよ、おまえの母、カエラ・アーサー、いや、当時のカエラ・トレミアは、黒龍討伐の英雄よ」

と、村長はそこでビッケの顔を見る。ビッケは何の話が始まったのか良く分からない。表情は完全に失われていた。

「かつて、数百年この地に姿を現さなんだ伝説の黒龍が『失われし王都』シュレイドに降臨した。これを単身撃退してのけたのがおまえの母の師匠、ココットのジゴロウ殿じゃ。おまえも何度か会うたことがあるじゃろう。ジゴロウ殿はこれを受け『ココットの二代目』とも『伝承者』とも呼ばれた」

ビッケは言葉が出ない。ジゴロウはまだ彼女が幼かった頃、何度かここポッケ村を訪れ、いろいろな狩りのお話をしてくれたおじいさんだ。あのおじいさんが黒龍を?いや、母さんが黒龍を?

「しかし、ジゴロウ殿を前にいったん引いた黒龍は、火山の奥で力を蓄え、怒れる紅龍ミラバルカンとして再度の降臨を果たす。これに単身立ち向かい、討伐してのけたのがジゴロウ殿の弟子にしておまえの母殿である、カエラ・トレミアだったのじゃよ。その功績を以て母殿は『黒の継承者』の二つ名で呼ばれることとなったのじゃ……ビッケ、ぬし、どうした」

ミラバルカン。その名を聞いたビッケの顔からはみるみる血の気が失せ、体は小刻みに震えていた。続いて体の芯が急速に熱くなる。
目眩がし、彼女は膝をついた。視界が失われ、頭の中に何かが響く。何か…何かが…。

あわてた村長が駆け寄る。

「ビッケ、ビッケよ、ぬし、しっかりせんか。一体…」

ビッケの顔を覗き込み、今度は村長の表情が固まる。

「おぬし…目が…」

ビッケの目は普段の色を失い、鈍い赤色をたたえていた。

「なんという…まだ終わらぬというのか…」

そんな村長の言葉が聞こえた様にも思う。

それが何を意味するのかただす間もなくビッケの意識は胡乱となり、

やがて彼女は気を失った。

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