書き下ろし「回復支援の基本」
ここではさふぃさんからのお便りや「モンスターハンター論:フラジャイル」を受けて、「そもそも何の話をしてんの?」という方に具体的なイメージを提供しましょう、という所をまとめてみます。
およそ上記の二つが理念的な部分をつつき回してますので、実際どんなことをやる上でそんな七面倒なこと考えてんだ、ということをものすごくミクロな具体例から見ていきましょう、ということです。あまり支援など考えたことがない、という方は、まず実際何をどう操作してるのかを見た方が良いでしょうし。
アタッカーハーフ、と言いますと援攻両刀となりまして、膨大な裾野が広がっちゃいますので、今回は「片手剣広域スキルによる回復支援」という取り組みやすい支援技術に絞ってその具体的な技術を述べてみます。
疑似ターン性の把握
モンスターとの戦闘局面というのも千差万別ですが、まずは最も基本となる下のタイムラインを把握しておきましょう。
左から右へと時間が流れまして、上段がモンスター、中段が仲間(支援対象)、下段が自分(支援者)となります。モンスターと武器と防具がちぐはぐじゃんというのが気になりますが、気にしない(笑)。
ティガの攻撃を単発突進としましょう(ドリフトしない)。Aポイント直前に攻撃した仲間が直後にティガの突進でぶっ飛ぶという良くあるパタンです(大剣使いの方は気にしない様に…笑)。Bがぶっ飛んだ仲間が立ち上がるポイントです。
モンスターは古典的には「攻撃→終了モーション(ズッコケなど)→ロックオン→2挙動で方向転換→次の攻撃」という手順で動いています。で、このうち2挙動の段階まで進むと(ポイントC)支援者の動きは鈍らざるを得ません。その後モンスターが自分を狙ってきた場合を勘定しないといけなくなるからです。
ここが「1ターン」の境目です。そして、これを見ますとポイントC以内に回復できなかった場合の次回チャンスはポイントC’ではなくポイントD以降となるのが分かります。この様なモンハンの「疑似ターン性」を把握していると「ターン中に回復する」か「次ターン(ポイントD以降)に回復するか」という差がその判断と操作の遅速で生じることが分かるでしょう。
次ターンへずれ込めば、その分パフォーマンスは落ちますし、次ターンのターゲットが自分だったり分かりづらかったり(咆哮だったり)すれば、更に3ターン目以降へずれ込むこともあるのです。後ろへずれ込めばずれ込むほどモンスターと仲間の行動選択ノードは広がりますから、策が立てづらくなり支援そのものが失敗する(仲間が力尽きる)危険もどんどん大きくなります。回復支援は「疾きこと風の如し」でないといけません。
つまり、「粉塵を飲む」という一点をとってもポイントC内でおさめるためには具体的な技術力を必要とするということです。そして、そこを安定して最速のタイミングで履行していきましょう、というのが達成目標となります。
アタッカーハーフという援攻両刀といった場合は、更にターン内で回復後にモンスターに斬りつけたいわけですからなおさらですね。
補足しますと今回片手剣をモデルにしてますんで「回復可能ポイント」はポイントA直後から、となります。が、ボウガンによる回復弾ではポイントB以降に狭まります。転がってる間は無敵時間である分回復弾も受け付けないんですね。ボウガンは「弾種」というのがありますから近接武器とは比べ物にならない様々な戦略が展開できますが、回復弾による回復支援は広域回復よりもはるかに高度で迅速な判断・操作が要求さると言えましょう。
ブラインドローテーション
そんな感じで「どこを詰めるのか」が分かりましたら、具体的な練習をしていくことになります。色々ありますが、今回は最も基本で、かつ一人でも存分に練習できる「ブラインドローテーション」を紹介しておきましょう。
ブラインドローテーションとは文字通りアクティブアイテム欄を見ることなく使用アイテムを選択することです。
そんなのそこそこモンハンやってりゃ大体で出来んじゃね?とお思いかもしれませんが、少なくともあたしは意識的な取り組みなくしてはできませんでした。アタッカーハーフを意識するまでにすでに数千時間単位でモンハンをやってましたが、その「大体のスキル」では安定して該当ターン内で回復していくことはできなかったのです(あらかじめアクティブアイテムが粉塵だったらそりゃ間に合いますが)。
更に、進んでは瞬間的にアイテムを切り替えて連続使用していくことになりますから(粉塵→回復薬・閃光→解毒→回復…などなど)、どのみちこのリアルスキルは必要になります。
無論だからといってP2Gですと24のアイテム欄に何がどう並んでるか諳んじてないと…というわけではありませんで(瞬発的に「指が選ぶ」のですから「暗記」しても意味がありません)、重要なのは優先度の高いアイテムを6〜7個しっかり固めて並んでいる様にする、ということです。
上の例でティガ相手ですと、瞬発的な選択が必要になる重要なアイテムは「粉塵・回復薬・閃光玉」だけですので簡単です(場合によっては角笛)。んが、これが「回復薬・回復薬G・ホットドリンク・秘薬・元気ドリンコ・粉塵・ペイントボール・閃光玉」とかなっていますと(アイテムボックスから順に入れるとこうなる)それだけでデッドウェイトが発生します。回復薬と回復薬Gなんかついつい「並び」で入れてしまいますが、支援からするとこの二つはまったく別の機能を果たすものなんですね(回復Gは広域化しない)。
明るいのは瞬発的に切り替える必要のあるアイテム
このように分断されていてはダメ
これがやや複雑な相手でも音爆・解毒・消臭・忍耐の実が入って来るくらいですから十分6〜7アイテムくらいで収まるわけです。あ、この数字は「マジックナンバー・オブ・セブン」という奴ですね。人が無意識に操作できる要素数は7くらいが限度というものです(短期記憶のコラムの数がその位。昔の6桁の電話番号はすぐ覚えられたのにケータイ時代になったら途端に覚えられなくなった、という実感のある方はすぐお分かりでしょう…笑)。
次点で自分をケアするアイテム(回復薬G・砥石)、その外に(一周するのでサークルだとしますと重要アイテムの反対側に)、非戦闘時(エリチェン時)や計画的に使えば良いアイテム(ホットドリンクや罠・爆弾など)が来ます。あ、閃光玉ってのは罠のたぐいじゃなくて支援手からすると瞬発的にモンスターを足止めしたい時に使うものです。
その辺が基本ですね。
で、「一人稽古」ですが、これは2つの意味で必要です。
ひとつはそのままで、せめて重要6アイテムくらいは考えなくても指が勝手に選んでくれる様に練習を繰り返すこと。一人で狩りに行っても良いですし、P2Gにはオトモもいます。この練習ではとにかく今何がアクティブなのかを常に把握していることが重要です。
もうひとつは狩りに行く準備。
こういった「並び」を構築しないといけないからといって準備の時に「あーうー」とやってますと「いつまで準備してんの!」と仲間に怒られますし、そうなりますとやんなっちゃって「大体でいーや」ともとに戻ってしまいます(笑)。
ティガが相手ならこう、ナルガだったらこう、という具合に考えるまでもなく持ち込みアイテムを準備できる様になるためには、これも意識的な一人稽古を繰り返すより道はありません。頑張りましょう。
補足
モンスターごとにメニューがあるのかよ、とお思いかもですが、基本的には「粉塵・回復薬・足止めアイテム(閃光・音爆など)」の組み合わせが定番(固定)となります。これを基準に前後に○○をプラス、という様に覚えていけば良いのですね。
また、上の「並び」はアクティブアイテム欄のもので、実際のアイテム欄の先頭が粉塵というわけではありません。実際のアイテム欄の先頭には「生命の粉・竜の爪」という粉塵の調合素材が来ますね。これは戦闘中に動きながら調合していかないといけませんから、即座にそれができる様にしていないといけないわけです。
実戦上のゆらぎ
こんな感じで「粉塵広域回復」と言ってもアイテムひとつ選ぶだけでもそれなりの練習の上に成り立っているわけです。実際の運用においては仲間が被撃する瞬間をいかに的確に捉えるか、そこからいかに最短時間で回復するか、更にアタッカーハーフならばこの二つの行為をターン内に追撃を加えることのできる位置へ移動しながら行うわけです。結構大変そうでしょ?
しかも、実戦にはゆらぎがあります。支援対象が人間ですから、色々くせがある。後半その辺の実際を見てみましょう。
上にあげたアイテムの並びですが、ここ最近のあたしが雪山ティガへと行く場合は実際はこうなってます。
ブログの方もご覧の方はご存知の様にあたしは大体「ひめ」というあかんたれを相手に狩りをしているわけなんですが、まともにやってたんでは追いつかない局面が色々ある(笑)。
雪山ティガ(ここ最近G3「ダイヤモンドダスト」を連戦していた)で、開始早々8番に二人して登場しますと(このケースが多い)真後ろにティガがいる。で、ぼけっとしてると発覚すくみ〜咆哮〜突進となるわけですが、P2から2年、何十回8番スタートだったら走れと言ってもひめは分からない(TT)。なんで分からないのか分かりませんが「ぱっとはじまってどこにいるかなんかわかんないのー!」なんだそうで、本人がそう言うんならそうなんでしょう。
それは仕方がないのですが(そうか?)、こちらも開始5秒で貴重な粉塵に羽が生えるのはご勘弁です(ティガ狩ったらラージャンが出てくる)。で、このケースではダッシュ後即反転して、ティガの咆哮をペイントをぶつけてキャンセルさせ、こちらに突進させたい、という具体的な狙いがあるのですね。無論それなら開始早々閃光投げたらいいんじゃね?ということなんですが、その辺は「面白さ」と「ご勘弁」のバランス次第です(笑)。
これは「並びの柔軟性」の問題ですが、お次はアイテムの連続使用と使用順序。
うちにはもうひとりmichi君というのがいるのですが、彼はなぜかレウスに行くと必ず毒キックを喰らう。特にP2Gからはバックジャンプブレスから着地せずに上昇して滞空攻撃をして来る様になったレウスですんで、もう喰らう喰らう(TT)。毒キック喰らったら当然大ダメージ&毒&ピヨリのmichi君曰く「ひでえ、もうふんだり蹴られたりですよ」な状況となるわけです。
これまたレウスの影に入りゃいーじゃんとか、ランスだったらガードすりゃいーじゃんとかもうそれはそれはP1時代から言い続けてるわけですから、ここに来てまだ蹴られるというのは一万年と二千年前からのレウス−michiの宿命なのだと思うしかない(笑)。
ここで、ではこちらはどうするかです。ご存知の様にこの状態になったハンターは高確率でレウスの追撃の的になる。何らかの対処がないと一落ち濃厚なパタンです。
回復・解毒・足止め・ピヨリ解除をどういう順でやるのかということな訳ですが、安定するのはキック後のレウスを閃光でたたき落とす→広域解毒→広域回復ですね。ですんでレウス戦ではこの一連のアイテムがスムースに連続使用できる様に並んでいる必要があるのです。
回復先でもイーんじゃね?というのもありますが、大概このタイミングというのはひめの方が墜落したレウスに喜び勇んで斬り掛かって回転尻尾だか噛み付きだかにぶっ飛ばされてる頃合いですので(笑)、michi君の解毒後二人まとめて回復するのがよろし、という感じになってるのです。広域回復というのは仲間がひとりだろうと三人だろうと一回にそれぞれを同量回復するのでまとめて回復できるならそうした方が大変お得なのです。
しかし、より重要なのは、特定条件でのアイテムの連続使用もその時その相手で色々だ、という点です。チャチャブーでもいようもんならレウスを墜落させてる暇もない。即座に連続粉塵で体力を上げるしかないかもしれない。終盤だと必要なアイテムが尽きている場合だってある。
決まった順序がスムースに履行できる様に、というのは重要ですが、それだけでもダメだ、ということですね。
ティガにしろレウスにしろ、こういった「その局面のための策」というのは、文字通りケースバイケースですんで、それぞれが工夫するしかないです。こういうのが「ゆらぎ」ですね。相手(仲間)次第、状況次第。あたしなんかはまだリアルで決まった相手が目の前という状況ですが、ネットで初見だったり数回の手合わせだったりといった場合はその場の発想で基本路線から「組み替えて」いく必要も出てくる。
つまり、重要なのは既定の順序を決めてかかることではなくて、その場の発想をタイムロスなく反映できる様な「技術を発揮させるための技術」の練習が重要だということです。前半にあげたブラインドローテーションというのはその代表的な一例ですね。ああいったものは、きちんと組み替えていける柔軟性があれば、どこまで行ってもパフォーマンスに直結するのです。
そんな感じで。
技術面から見ても、支援からアタッカーハーフというのは非常にシビアなタイムラインの中で、色々判断してやらないといけない。だから既定路線でパッケージできる部分はパッケージングしたい。でも、実際の狩りの局面ではゆらぎが多発して、即座に組み替えていかなければならない。そんな感じが見えましたでしょうか。
だから、この路線はその基盤をどこに置いたら良いのかというのも大変難しくなって来るのですね。今回はアイテムの並びという本当にミクロな所だけをあげましたが、それでもこんなです。これを対モンスター、フィールド特性、攻撃可能な時間と回復可能な時間、仲間の得意不得意等々において何重にも工夫していかないといけない。そしてそこから、ゆらぎに対応できる技術を発揮させるための技術を抽出していかないといけない。
「フラジャイル:補遺」で述べたアプリケーションとしてのアタッカーハーフというのはそういうものです。それが「フラジャイル」やさふぃさんへのお返事で述べた様なOSとしてのアタッカーハーフの上で走っていくのですね。
補足
「技術を発揮させるための技術」というのは無論ゲーム内のスキルがダイレクトにこれに当たる場合も多いです。片手剣広域支援なんかでは「早食い」が大変分かりやすいでしょう。
この「早食い」なんかも回復支援ができたら良い、という場合はその効果が前倒しで発揮する様に、という点が重視されますが、アタッカーハーフではその後のターン内の攻撃を一手でも増やすという発想で使っていく場合もあります。