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HUNTER's LOG on PORTABLE

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ハンターの世界

初出:2007.00.00 HUNTER's LOG on portable

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世界に名だたるファンタジーの金字塔に『指輪物語』がありますが、あのお話は作者トールキンの想像した膨大な神話のごく一部、最後の最後のストーリーだけを書き記したものです。世界が創造され、神々と魔族との長い長い戦いの年月があり、最後に人間が登場し、神話の時代から人間の時代へと移行する、『指輪物語』はその最後の戦いを記したものなのですね。
では、その長い長い神話をまとめた『シルマリルリオン』という書物は、『指輪物語』に対してどうか、と言うならば『指輪物語』のファンであっても読み通すのがしんどい代物です。時々ちらちら眺める分には楽しいのですが。
今風にいうならば『シルマリルリオン』は『指輪物語』の裏設定集である、という風にも言えるでしょう(ファンの方には怒られそうですが)。

さて、この文章のテーマは

あるひとつの架空の世界(以下「世界」)を提示するとして、その「世界」に奥深さを与えるのは何か。

という点に関する考察です。

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「世界」の生命力

ここで「世界」の奥深さを、その「世界」の持つ生命力と言い換えてみます。
生命力とは何か。ユンギアンの様に言うなれば、それは明示されない無意識層の広大である、ということになるでしょう。

少々解説します。
ユングの心理学は、その柔軟性から様々な分野の考察へ援用されますが(もともとはかなり純粋な臨床心理学なのですが)、特に神話学・ファンタジー系への考察とは相性が良く、しばしば「トンデモ系」へも飛び散りつつ多用されています。
心理学として基本的には人の意識を表層意識・無意識と複層化してとらえ、その心的エネルギーの交流のあり方に表層人格が被っているトラブルの矯正案を探る、という仕組みのものですね。

そのユング心理学によると、あまりにも表層が無意識を明るみに引きずり出してしまうと、その意識の総体は「生命力を失う」ことになる、と言われます。先だって亡くなられた河合氏風に言うならば「汲み取りすぎたら枯れちゃう」ということです。詳細な心理学講座をここで展開する気はないのですが、卑近に例えるならば、言葉巧みな空っぽなやつ、というイメージが近いでしょう。もっとも言説化に長けていてもそれをはるかに上回る曖昧さを持ち合わせている人格もあるので、相対的な問題、という点は注意ですが。
もっと端的な例としては、無意識を表象させることを「仕事」にしているアーティスト系の方ならば、やりすぎると鬱になるという即効性のある証明を日々経験しておられることと思います(笑)。

さて、そろそろ文章のアップ先を間違えちゃったの?と訝しく思われる方も多かろう、ということで注意を喚起しておきますが、これは紛うことなく「モンスターハンター」シリーズの世界観に関する考察の文章です(笑)。

ユングの心理学は、基本的にはもちろん一個人の意識を思考対象として捉えるためのツールですが、これが、より広い分野、まさに「世界」の持つ(持つべき)構造への思考の足がかりともなります。
上の表層意識・無意識の複層化を「世界」へ転用するならば、表層意識が明示された「世界」、無意識が暗示された「(語られなかった)世界」、と考えると良い、ということです。
つまり、あまりに明示されすぎちゃった「世界」は、生命力を失っていってしまう、ということになりますね。

逆に言うならば、生命力にあふれた「世界」を構築するためには、明示する分量をはるかに超えた量の「語られない世界」がなくてはいけない、ということになります。
そして、このこと(明示されすぎてしまったこと)が、まさに現行のモンスターハンターシリーズが抱えている、おそらくは「最も現場から離れているが、最も致命的な迷走の原因」である、と中の人は考えているのです。

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無印と『ハンター大全』

中の人は無印モンハンを経験したわけではないのですが、それでもMHP1st(初モンハン)のプレイ中に購入した『ハンター大全』1巻の衝撃は甚大でした。ぶっちゃけて言うならば「ワクワク」したのです(いいおじさんが)。
その感覚は、ゲーム内に明示されたモンスター・アイテムに対する説明よりも、ゲーム内に出てこなかった「語られなかった世界」に関する記事によってもたらされたものと思えます。
ゲーム内で語られなかったモンスター・武器・防具・アイテム、そして垣間見える歴史。これらは、ゲームの(無印の)完成後「付け足された」わけではありません。無印の完成時・発売時には存在していました。これらの存在が、『ハンター大全』刊行以前から、無印世界の「奥深さ」を醸し出していたのです。

余談ですが、この「語られなかった」世界とは、要するに没案だった部分が大半だ、とも言えるでしょう。しかし「ダメ」だから没、というよりも「一定の分量しか許されなかったので削った」感が大きいですね。『ハンター大全』において、このあたりの記述を「過去において」とか、「報告が少なく曖昧」とか、「試作段階の」とかいうように、ハンターの世界において、という視点でまとめてみせたのは卓抜した編集技能でした。

ともかく、ゲーム本編に直接関係ないモンスターの系統であるとか、ギルドの仕組みであるとか、「世界」のたどった道であるとかの断片的な情報が無印の「世界」に大きな奥深さを与えていたことは論をまたないと思います。
いずれにせよ、この時代、モンスターハンターの「世界」は確かに「生命力」を保証する「語られない世界」を持っていた、と言えるでしょう。

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MHdos以降の問題

これ以降、新たな追加要素として「牙獣種」「甲殻種」の発明がありましたが、これはよい仕事でした。ただ、惜しむらくはその背後にあるべき「語られない部分」の量的少なさが問題となります。飛竜の持つ豊かな系統樹に相当するものをサル・カニは持ってない様ですね。
無印からの飛竜種に対する「薄さ」が牙獣種・甲殻種に感じられるのは、このあたりに原因の多くがある様に思えます(動きの完成度は高いのですが)。

それ以外はより問題でした。
目玉だったはずの「古龍種」には、その存在のバックグラウンドに関する想定がまったく感じられません。
「すべてが謎に包まれている」ことと「想定が無い」ことは違います。緻密な想定を「謎として」語らないからその謎は生命力を持つのです。先にも書きましたが無印の豊かさは「大全」の刊行以前に皆が感じるところでした。何かが後ろに大きく横たわっていれば、それは公開されなくても感得できるものです。古龍種の後ろには、その感得できる何かがないですね。

さらに、ティガ・アカム・ヒプ等々のここしばらくの新モンスターは、一貫して「絶滅」が想定されていたモンスターの焼き直しです。「語られない世界」をより充実させるどころか、折角のその部分を「食い散らかして」明示してしまった、かなり「まずい」出自のものですね。
「絶滅していなかった」なら、それでもよいのですが「語られなかった部分」を表に出す以上、その何倍もの新たな「語られない部分」を作り込まなければ本来の生命力は維持できないはずで、まさにそうでした。

そして極めつけが、「祖龍」「アカムトルム」といった起源を表に出しちゃったことです。起源を表に出すことが持つ危うさは、全体の整合性を崩す、といった様なことにとどまりません。
なんとなれば、起源とは「世界の語られない部分」を一身に象徴する要素だと思われるからです。それはその「世界」の「底」に位置するわけで、「底」の公開とは深さの公開に他なりません(要するに「底が知れる」わけです)。「起源の公開」は多くの場合「世界の終わり」に等しいことをゲームや小説の作り手はもっと重く見るべきです。

重要な点なので脱線しますが、そもそも「起源」なる概念に対応するリアル上での事象が存在するのか否かというのは「否」に傾く予想がされています。つまり、この世にはそもそも「起源」なるものはまったくなく、人の頭がその概念をつくり出しただけだ、ということですね。多くの研究対象の起源を求める行為が、その究極に近づくにつれてゼノンの矢の様に失速し、最後に「特異点」を持ち出さざるを得なくなることからも、おそらくそれは当たっていると思われます。

そのような点からも「起源」とは「語られない世界」の象徴として、影にあって「世界」の生命力の源として語られないまま機能させるべきものと言えるでしょう。
「銀行」がわりに乱獲される「起源」を持つ「世界」が深いか浅いか、考えるまでもなくなってしまっているのが、今のモンスターハンターの「世界」です。

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「種」と「白地図」の提供

しかし、このような点を見てくると、開発陣がその「世界」の開発段階において膨大な「語られない部分」を用意する、という手法そのものが限界にきている可能性も慮られます。それをやるにはそもそもの明示される部分がデカすぎてきている、ということですね。これは無印のコンパクトさとMHFののびきった(笑)複雑さを比べてみれば一目瞭然でしょう。

つまり、世界の奥深さを保持する手法は、そのあり方を変えてゆかないと実行できない、という局面にきているのじゃないか、ということです。

では、その方法はというと、考えられるうち、有力かつ今風なのが「共有」によるものなんじゃないかと思います。
開発側は、その最大の枠組みと、各ポイントで焦点となる「種」を用意し、それをユーザサイドに提供する。ユーザサイドがその「種」から無数のサイドストーリーを育てていく。このようなあり方が、重要になってくると思います。要は白地図と素材を渡せ、ということですね。

実はすでにこれに近い試みをユーザサイド発で始められているサイトもあります(wikiサイト「モハ辞典」管理人:Sun様)。この「モハ辞典」は、蓋し大変な可能性をはらんだサイトであると言えます。このサイトが、開発側の提供する高品質な画像素材などをふんだんに使用できていたら、と考えると中の人が言わんとしている「共有」の形のイメージが見て取れるかと思います。さらに、クリティカルを射抜いた記述が開発側にフィードバックされて、それがショートムービーみたいな形で逆提供されるような体制ができれば天晴、ですね。無印発売前のプレムービーや、各シリーズのオープニングムービーがハンターたちに与えている刺激の大きさを思えば、このような「サイドムービー」の存在は本編発売「後」にこそ花開くべきものです(これはプロフェッショナルな「商品」としての提供で良い)。「狩猟音楽集」を購入された方ならば「狩猟映像集」があったならば…欲しいでしょう?

ま、夢想はともかくそのような「語られない世界」…あ、これはゲーム本編で明示されない部分、ということですので、ゲーム外であれこれ語られる分には大いによいのですが…の拡充のあり方もあるのでは、ということです。いずれにせよ、その規模が大きくなるにつれ、開発とエンドユーザの垣根は薄くなってゆくべきでしょう。と言うより、双方をあらかじめ組み込んだダイナミズムが、大規模な「世界」の奥深さの維持を可能にする、と言っても良いでしょう。

MH3がどのような「世界」と、その開示の仕方を目論んでいるのか今の段階では知りようもないですが「コンパクトさに回帰しよう」というのでないかぎり、上に述べた要素は確実に必要になってくると思います。

ハンターによるハンターの「世界」。
では「世界」が地平線の向こうを感じさせてくれる生命力を持ち直すことを願い、今回はこの辺で。


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ところでこの記事の章頭にあげた画像のすべては、無印モンスターハンター発売前にE3で公開されたプロモーションムービーのものです。

勝手にあげちゃまずいかもしれませんが「これがモンスターハンターの始まり」ということで、あえてのせました(怒られたら削除します)。

もしこのムービーを未見のハンターさんがいたら、ぜひ一度ご覧になってください。公式初代モンハンサイトからダウンロードすることができます。

まさに、始まりのモンスターハンター、です。

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