龍と竜
雑記帳:ら行
モンスターハンターの世界の「リュウ」には、二つの経路の「リュウ」のイメージが流入し、それを形作っています。
ひとつは有史以前から人類が紡いできた、暴威を空想的に象徴した「龍・竜」のイメージ。
もうひとつは実際2億年前から6500万年前までこの地球上に覇を唱えていた「恐竜」のイメージ。
ここでは前者の「龍・竜」の方に注目して、その基本的な概略を見てみます。
龍と竜
二つの漢字が当てられますが、実際ゲーム内でも両方用いられ、使い分けられています。
竜−四脚(二脚二翼)
龍−四脚二翼
アプトノスからディアブロスに至るハンターの世界を取り巻く「日常的な」モンスターはみな「竜」。非日常的ですが、これらの祖にあたると言われるアカムトルム・ウカムルバスも「竜」の範囲。また、MH3で登場の予告されている海竜・獣竜種もこの範囲。
「古龍」に属するラオシャンロン・オオナズチ・クシャルダオラ・テオテスカトル・ナナテスカトリ・ヤマツカミ・黒龍〜祖龍が四脚二翼の「龍」となります。ラオもヤマツカミも四脚二翼。ラオは成長過程で翼が退化。ヤマツカミは未分化な状態ですが、ヒレの数は四脚二翼の分あります。
大体において「レウスはリアルで生き物っぽいけれど、テオはファンタジー世界の住人だ」と評されるのは上の二分のうち「龍」にあたるものが、四脚あってさらに翼を持つ、という点で実際の生き物(脊椎動物)にこの構造を持つものがいないことに起因します。
ドラゴンとワイバーン
これは共に基本的には翼を持つ大蛇の形を持つ空想上の生物を指すものですが、龍と竜に呼応して
ワイバーン(竜)−二脚二翼
ドラゴン(龍)−四脚(二翼)
の別であると思って良いです。良く混同しがちなのは「飛竜は実際の(恐竜の)翼竜の延長でリアルっぽい。ワイバーンだから良いのだ」みたいな発言がありますが(笑)、「ワイバーン」は特にリアルであることは指示しません。イギリス地方でそういった前脚が翼状に発達した「リュウ」が想像されており、それがワイバーンと呼ばれただけで、空想上の用語であることはドラゴンと同じ。恐竜の翼竜がワイバーンであるわけではありません。
大体そのイギリスの例にしても古くからドラゴンと違うワイバーンの伝説があるのかというとそうでもありませんで、その実体は「紋章デザインのために生み出された形状」であろうと考えられています。ワイバーンとドラゴンを使い分けてファンタジー世界で活躍させるのは現代になっての話の様ですね。有史以来、というスパンで言うなら、「正統派ワイバーン」というイメージはそもそも存在しないのです。
また、ドラゴンの「四脚(二翼)」とカッコがついたのは、空想上の「ドラゴン」は必ずしも有翼ではないため。というよりも、「ドラゴン」で詳細にあたりますが、こいつらは古くは翼は持たない…と言いますか四脚すらおまけ。ドラゴンのイメージとはもともとは単なるばかでかい蛇なのです。
結局その分かれ目は?
で、結局モンハンの世界では龍と竜はどう違うのよ、ということですが、外見的には上に述べた感じで。個人的にはもっとも重視すべきなのはその存在のアプローチであろうと思われます。
すなわち「こういう生き物がいそう」という発想で作られたのが「竜」。
(人間の)○○への不安(畏怖)がモンスターの形をとったらこうなるだろうという発想で作られたのが「龍」。
ということで「生物」という発想を持つ「竜」に関しては引き続き「恐竜」の項を、「畏怖」というイメージから生まれる「龍」に関しては引き続き「ドラゴン」の項をご覧下さい。
また、MHdos古龍種、特にナナ・テオの造形にはまたちっと経路の違う経路からのイメージの流入もあります。それは「グリフォン」。この辺りもあわせてご覧下さい。